
風景を眺める眼差しが人側から生きもの側へ反転した瞬間
The moment observing the scenery reversed from the human to the living beings'
Photo : 北アルプス 上高地 夏景色 / sada / Adobe Stock
Posted by local knowledge on May 8th, 2025
錚々たるメディア/マスコミが、何の見識もなくAIで大騒ぎを繰り返していることにうんざりして「いやいや、人の知性や人が作り出した知性(AI)なんぞ、自然が持っている知性に比べたら大したものではないよ」と主張したいと考えていたときに、『人間以外の知性』(ジェームズ・ブライドル、早川書房:原題は「Ways of Being: Animals, Plants, Machines: the Search for a Planetary Intelligence」)という書籍に遭遇し、まさに「我が意を得たり」と確信し、「物質知性」をテーマにしたウェビナー(Webinar)を実施したのが昨年の11月でした。その節はお世話になりました>ブリヂストン様。
それとは別に、私自身は昔から『アサヒカメラ』や『日本カメラ』(いずれも休刊)を愛読しつつ、割と頻繁に写真集を購入しているカメラ小僧(ジジイ?)なのですが、別の仕事(森林関係の調査)の関係で、以前購入したある写真集をパラパラめくっていた時に、下記の文章に再会しました。
「どこにでもある田んぼや雑木林が全く新しい風景に見えてきたのはいつの頃だったか。それまで意識していなかったあぜ道に咲く野花やため池のカエルが、同じ土地に暮らす仲間のように思えてきたのである。それは、風景を眺める眼差しが人側から生きもの側へ反転した瞬間だと言ってもいいかも知れない。以後、不思議なことに泥と汗にまみれた土地が古いものではなく、未来の風景として見え始めたことも事実だ。時代の波にもまれて消えていく田園。人と自然が共存していた風景は、忘れ去られたように遠のいてゆく。今よく見ておかなければ、写真で記録せねば、そんな思いが信念となって私を突き動かしていたことは言うまでもない。今は、琵琶湖水系のなかに毎年巡ってくるたおやかな季節に心から感謝したい気持ちだ。里山には水が流れている。それは、終わりのない生命の循環、“つながりの物語”だと思う。」
自然と人との関わりをテーマに素晴らしい映像を撮り続ける自然写真家・今森光彦氏が2023年に発行した写真集『里山』の「あとがき」として綴られた美しい文章です。これに触発されて、私たちに今必要なのはAIを駆使して生産効率を上げようとする貧乏臭い態度ではなく、「ぼんやり写真集を眺めながら妄想する時間だろうなあ」と考え、日本を代表する写真評論家・飯沢耕太郎さんにダメ元でMCをお願いしてみたら、意外にも快く引き受けていただけたので、月1回のペースで「ウェブフォトギャラリー」を始めることになりました。本日がその初回です。無料なのでみなさんぜひお越しください。午後10時に開始します。参加中のみなさんを安眠に誘うことができれば大成功(?)でしょうか。
https://www.localknowledge.jp/2025/04/1927/
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