本の場

まちの読書文化を官民連携で支える ― 「公営書店」八戸ブックセンターというユニークな挑戦

Posted by local knowledge on March 18th, 2024

青森県八戸市には、全国的にも非常に珍しい「公営書店」八戸ブックセンターがあります。「本のまち八戸」を推進していく目玉施設、幅広い市民を対象に豊かな読書文化を育むことを目的とした公共施設です。

人口20万人を超える八戸市には、ふつうの書店が複数存在しています。いくら読書文化振興の大義があっても公共施設が民業を圧迫するわけにはいきません。地元書店の経営にマイナス影響を及ぼさずに市全体として読書文化が盛り上がるよう、八戸ブックセンターの運営には実にさまざまな創意工夫が凝らされています。

ベストセラーや雑誌やコミックを大々的に店頭展開すれば、当然地元書店の商売に悪影響が出ます。必然的に八戸ブックセンターでは、すこし値の張る人文書や芸術書といったまちの書店が積極的には取り扱いにくい、2、30年前の大学生協のような本たちが品揃えの中心になっています。八戸ブックセンターの基本方針の1つめである「本を読む人を増やす」ために、まちの書店や図書館でなかなか目にすることのできない本を仕入れて陳列し、市民の選択肢を増やしているわけです。

行なわれるイベントも、ベストセラー的な、多くの人が気軽に楽しめるものとはかなり違っています。基本方針の2つめ「本を書く人を増やす」に沿って開催される「執筆・出版ワークショップ」では、プロの講師を招いて「超ショートショート講座」やZINEづくりが行われています。仙台や東京では珍しくない創作コース的な場を八戸で見つけるのは難しい、でも八戸ブックセンターが定期開催することで地元の同好の士がつながり独自の活動が展開すれば、文筆家や出版人が続々誕生する将来も期待できる、と夢は広がります。

基本方針の3つめは「本でまちを盛り上げる」。日頃から八戸出身の作家やアーティストのイベントが積極的に企画され、毎年秋に開催されるブックフェスでは市民による一箱古本市や出版社の出展ブースが出る等まちを挙げて盛り上がります。

全国に例を見ない「公営書店」だからこそ8年にわたる取り組みや創意工夫の数々には学ぶべき点が多くあります。品揃えやイベントといった外向きの工夫以外にも、たとえば、書店のカウンター業務は地元書店に委託している等、地元書店と経済的にもしっかり共存共栄して「本のまち八戸」をつくっていくぞという本気度が随所に感じられます。

3月28日の「本の場」では、開設以来の八戸ブックセンター所長で市職員でもある音喜多信嗣さんにこれまでの歩みを振り返っていただきながら、本にまつわる官民連携の新たなかたちに思いを巡らせます。

本イベントに関連する音喜多さんお薦めの一冊

小田くん家は南部せんべい店

小田くん家は南部せんべい店

著者:髙森美由紀

出版社:徳間書店

発売日:2024/2/29

1,980円(amazon.co.jp 2024年3月7日時点)

開催概要

イベント名称まちの読書文化を官民連携で支える ― 「公営書店」八戸ブックセンターというユニークな挑戦
開催日時2024/3/28 (木) 19:30~21:00
※お申込みいただいたみなさま全員に見逃し配信を行います。イベント終了後一両日中にはアーカイブ動画配信を開始し、約1週間のあいだご視聴いただけます。
話題提供者音喜多信嗣(おときたのぶつぐ)
八戸ブックセンター 所長
イベント形態Zoomミーティングを利用したオンラインイベントです。
※お申込みいただいた方および「ローカルナレッジ」月額サブスクリプションメンバーの方には、参加URLを事前にメールにてお送りします。
参加料400円(税込)
※月額サブスクリプションメンバーは不要
参加方法このウェビナー(Webinar)のみ申し込む
または月額500円(税込)のサブスクリプション サブスクリプションに登録する
※サブスクリプションメンバーは月額500円のお支払いだけで、毎月3〜4回実施される「ローカルナレッジ」が開催する全ての有料セミナーに参加可能です。
購入期限チケットの購入期限は当日3月28日の18:00までとさせていただきます。
主催本棚演算株式会社
※プログラムの内容・時間などは予告なく変更となる可能性があります。ご了承ください。
音喜多信嗣(おときたのぶつぐ)
音喜多信嗣(おときたのぶつぐ)

1994年4月八戸市庁に入庁。健康福祉部、経済部、総合政策部、農林水産部の後、2016年4月に八戸ブックセンター開設を担当する、まちづくり文化スポーツ観光部に配属。2016年12月の八戸ブックセンター開設と同時に所長となり現在。