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物質知性の未来展望

Photo : 日本の寺 京都 / Jo Panuwat D / Shutterstock

Posted by local knowledge on November 16th, 2024

「知性」(intelligence)を定義しようとすると哲学論争になるので、この言葉が持つ意味については「ああでもないこうでもないという状態に留めておく」という前提で話しを進めますが、なぜ今回「物質知性」を主役にしたイベントをやろうと思ったか、といえば、それはもう(自分自身も含めた)ヒトの知性に失望しているから、ですね。特に「AIで◯◯できるようになった」という報道を目にするたびに「こいつらバカか」と思います(理由の詳細は長くなるので省略)。

生物としてのヒトの弱点の代表的なものとしては、1)欲望が青天井、2)便利・効率・競争・比較が大好物、3)(言語も含めた)視覚的価値を重視し過ぎる、そして4)1~3に対して無自覚、ということになるかと考えています。何しろ私自身がこの全ての性質を満たしている俗物であります(なのでかろうじて4はクリアしている、とは言えるかもしれません)。太陽から請求書が来ない(「仕入原価ゼロ」を「自然の恵み」とパラフレーズしているだけ)のをいいことに好き放題やってきたら、ついに「脱炭素」通知が届いてしまった、というところでしょうか。それでさえ「地球の環境をヒトに最適化したい」だけであって、悲鳴をあげているのは地球ではなくヒトそのものですからね。

それに比べると普段から物質(=自然)を観察・計測している自然科学の研究者は、物質自身に内在する様々なポテンシャル(=そこに秘められた能力、という意味だということにしておきます)に対して「驚きの連続」を実感しているはずなのです。何しろ「げ。自然をシミュレートしてみようと思ったら量子コンピュータ的なものじゃないとダメじゃん。ノイマン型使えねえ」と喝破したのがかのリチャード・ファインマン(Richard Feynman:1918-1988)でして、彼の1982年(40年前!)の論文「Simulating Physics with Computers」をきっかけにこの自然が持つポテンシャルの面白さにハマった人たちが研究を続けているわけです(おそらく社会実装される頃、私はこの世にいない可能性が高い)。

様々な物質科学・材料科学分野の第一線にいる人たちが一体何に驚いているのか、何に興味を持っているのかを一般の方に知っていただくと「おお。それはこういう使い道があるんじゃないか」と妄想していただけるんじゃないかな、というのが今回の「LocalKnowledge/シュレディンガーの土曜日」の狙いです。但し当日は11時から20時までの長時間開催でして、さすがに最初から最後まで付き合ってくれる奇特な方はあまりいないだろうとも予想していますので、ご多忙な方は19時にスタートするファイナルセッションに1時間だけお付き合いいただければ、当日の様子全体を掴むことができるのでお勧めです(当日はお申し込みさえいただければ出入りは自由なので、興味のあるセッションだけにご参加いただくのもOKです)。普段異様な働き方をしている研究者の皆さんを勤労感謝の日にも働かせようとする無謀な企画ではありますが、せっかくの機会ですので、ぜひご参加ください。
https://www.localknowledge.jp/2024/11/1659/

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