守田衣利『Moon Rainbow』

写真集の夜
飯沢耕太郎オンライン・フォトブック・ギャラリー
第4回 守田衣利 『Moon Rainbow』

Posted by local knowledge on July 12th, 2025

18年の月日が流れ、ひとつの命を預かるように育ててきた娘を、自由に世界へ送り出すときが来た。写真を眺めていると、ふと、かぐや姫を書いた誰かも、娘を育て終えた親だったのではないかと思った。家を離れていく娘を見送る気持ちを、物語に託したのかもしれない。

写真家・守田衣利さんは熊本生まれ東京の下町育ち、ニューヨークで結婚され娘を出産してまもなく、思い立って家族でマウイ島へ移住されます。そのあと東京、上海、熊本、宮崎と転々とされ、カリフォルニア州サンタモニカを経て最終的にはサンディエゴに定着。写真集『Moon Rainbow』は、写真家として娘の成長を18年間見つめ続けた、愛しさに溢れた家族写真を編んだ一冊です。

タイトルのMoon Rainbowは、文字通り夜に月に掛かる虹のこと。マウイ島で娘と見たMoon Rainbowは、守田さんの記憶に深く刻みつけられただけで、写真として残ってはいません。当然作品が収録されることもありませんでした。

カメラと三脚を取りに戻ることなく娘と見上げ続けた虹をタイトルに冠した写真集からは、作品として切り取られることのなかった家族の歴史の分厚さが深く静かに滲み出ていて、見る者自身の子ども時代の記憶が呼び覚まされます。

「写真集の夜」第4回は守田さんをゲストにお迎えし、写真評論家・飯沢耕太郎さんとお二人で、作品ひとつひとつを取り上げながらその当時の情況や記憶を中心に語り合っていただきます。

(飯沢さんコメント)
守田衣利さんは、昨年の第4回ふげん社写真賞のグランプリ受賞作家です。その受賞作品が、作品集『Moon Rainbow』にまとまりました。守田さんがアメリカで結婚し、娘を出産し、さまざまな土地に移り住む中で、2005年から2023年まで撮り続けた家族写真を中心にまとめた同シリーズを取り上げ、彼女がどんなふうに写真家として生きてきたのか、そのバックグラウンドを含めてお話を伺いたいと思っています。

開催概要

名称写真集の夜
飯沢耕太郎オンライン・フォトブック・ギャラリー
第4回 守田衣利『Moon Rainbow』
開催日時2025年8月15日 (金) 22:00~23:00
※見逃し配信は行いません。後日、アーカイブ動画を有料で販売する予定です。

ゲスト守田衣利 (写真家)
案内人飯沢耕太郎 (写真評論家)
形態Zoomウェビナー(Webinar)を利用したオンラインギャラリーです。
※お申込みいただいた方には参加URLを事前にメールにてお送りします。
参加料無料
参加方法このウェビナー(Webinar)を申し込む
購入期限チケットの申込期限は当日8月15日の21:00までとさせていただきます。
主催スタイル株式会社
※プログラムの内容・時間などは予告なく変更となる可能性があります。ご了承ください。

今夜の写真集

『Moon Rainbow』

『Moon Rainbow』

著者:守田衣利

出版社:ふげん社

発売日:2025年7月6日

6,600円(税込)

飯沢耕太郎(いいざわ・こうたろう)
飯沢耕太郎(いいざわ・こうたろう)

写真評論家。詩人。1954年、宮城県生まれ。1977年、日本大学芸術学部写真学科卒業。1984年、筑波大学大学院芸術学研究科博士課程修了。主な著書に『写真美術館へようこそ』(講談社現代新書1996)、『私写真論』(筑摩書房2000)、『デジグラフィ』(中央公論新社 2004)、『きのこ文学大全』(平凡社新書2008)、『写真的思考』(河出ブックス 2009)、『キーワードで読む現代日本写真』(フィルムアート社、2017)、『African Sketchbook』(Purple、2025)、『猫島からの帰還』(ふげん社、2025)などがある。
(撮影:うつゆみこ)

守田衣利(もりた・えり)
守田衣利(もりた・えり)

熊本県に生まれ、東京で育つ。フェリス女学院大学卒業後、ニューヨークのICP(International Center of Photography)で写真を学ぶ。家族、記憶、日常の情景をテーマに作品を制作。前作『ホームドラマ』は国内外で発表され、2005年に新風舎から写真集として刊行された。
主な受賞歴に、写真新世紀優秀賞・ホンマタカシ選(1998)、新風舎・平間至写真賞大賞(2004)、JGSアーティストアワード(2015)、Tory Burch × ICPフェローシップ(2023)、第4回ふげん社写真賞グランプリ(2024)など。主な収蔵先に、Joy of Giving Something(JGS)財団(ニューヨーク、米国)、ミルウォーキー美術館(ミルウォーキー、米国)、清里フォトアートミュージアム(山梨、日本)などがある。
現在、カリフォルニア州を拠点に制作を続けている。
(撮影:@komarippe)