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せっかくの夏休みなんだから発想のスケールを広げよう

Posted by local knowledge on August 4th, 2023

「グローバル人材」とは「グローバル化が進展している世界の中で、主体的に物事を考え、多様なバックグラウンドをもつ同僚、取引先、 顧客等に自分の考えを分かりやすく伝え、文化的・歴史的なバックグラウンドに由来する価値観や特性の差異を 乗り越えて、相手の立場に立って互いを理解し、更にはそうした差異からそれぞれの強みを引き出して活用し、相乗効果を生み出して、新しい価値を生み出すことができる人材」なんだそうです。バカじゃねえの。そんな人間いませんって。グローバル人材ってのは普通に考えれば、グローバルから必要とされている人でしょ。アップル(Apple Inc.)から鏡面磨きを依頼された小林研業のような会社、あるいはそこに勤務する人たちのように、別に世界で活躍するつもりなんてさらさらないのに、勝手に向こうから擦り寄ってくるような逸材こそがグローバル人材じゃないですかねえ。

で、グローバル人材が必要な理由は「スケールの大きなビジネスを展開して欲しいから」というところがホンネなんだと思いますが、この「大きなスケール」というのがまた誤解を生みやすい言葉でして、昔、フォーブス500(Forbes 500)という(名称が変わったようですが)、米国の雑誌Forbesが規模の大きさで企業をランキングするという能天気な企画がありました。ところが「規模の大きさ」にも売上、従業員数、粗利など色々あるわけで、それらの指数をどう調整するとバランスが取れていると言えるのかがよくわからなくなり、最後はかなりいい加減な決め方をせざるを得ず、ランキングそのもののの評価を下げてしまった、ということがありました。これは要するにアントニオ猪木とモハメド・アリの異種格闘技戦(古い)と同じで「ルールが違うもの同士が戦ってもゲームとしては成立しない」という話と同じなわけです。何れにしてもどうせ比較するのが難しいのが「規模のスケール」の宿命ならば、いっそのこともっと別のスケールを競ったら面白かろう、と思うわけです。

例えば夏の風物詩の「花火」と「風鈴」を比較してみましょう。この2つの「スケール」を比較すると誰もが「花火の勝ち」だと思うでしょうけどね、これ逆なんですよ。花火は確かに迫力もあるし、花火独特の腹に響く重低音はなかなか捨てがたいのですが、天空サイズで花火を観察すると実にちまちました瞬間芸であることがわかります。しかも費用の大半は財政(税金)を投入しているので、ビジネスとしても“スケール”しにくい上に、感動が持続せず、極めて揮発性が高い。それに比較すると風鈴には「広大な天空を漂う風をたった一つの小さな鈴の音に集約してしまう、という、とてつもない仕事をさらっとやってのける大きなスケール感がある、しかも風が吹く限りそれが永遠に続く、費用は風鈴の購入費用のみなので極めて民主的。素晴らしいと思いませんか。

つまり「発想のスケール」が違うんですね。「鯉のぼり」も空を海と見立てるというかなり乱暴な認知変革を強制しているのですが、このように「見立てや発想のスケール感」で勝負した方がちょっと人生豊かな感じがしますよね。もちろんこのスケールは売上のスケールとほぼ無関係ですが、売上スケールの比較が果てしなく貧乏くさい勝負に成り下がるのに比較すると、発想のスケールが大きい仕事って、それに携わっている人自身がそれを理解しているはずですから、仕事していても楽しいはずだし、それを眺めている私たちにはその人たちの「カッコよさ」が伝わってきます。売上スケールの貧乏くささと発想スケールのカッコよさのどっちを取るか、と言われたら、やはり発想でしょう。これは仕事の種類を問いません。事務作業や営業でも、その仕事の「発想のスケール」を膨らませるというのはどういうことだろう、といったあたりから考えてみてください。とても面白い妄想が浮上してくるはずです。夏休みは、発想のスケールを膨らますためにあるのかもしれませんよ。

ローカルナレッジ 発行人:竹田茂

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