シュレディンガーの水曜日

物質が持つ知性はどのように社会実装可能か

Living in the Intelligence of Materials World

Posted by local knowledge on October 31st, 2023

ラテン語の「ars」は本来「技」「技巧」「手腕」などを指す言葉ですがここから派生した「artificialis」が現在私たちが使う「artificial 」の語源で、「人工的な(人為的な)」という日本語がここに割り当てられるわけですが、この対義語が「natural」すなわち「自然の」になります。自然に実在するものの代用品(alternative)を人為的に作る行為が「artificial 」で、「artificial intelligence」には本来「人工知性」という日本語訳が割り当てられてしかるべきですが、日本語の、つまりカタカナの「インテリジェンス(intelligence)」は、ヒューミント( HUMINT)や、オシント(OSINT)に代表される諜報活動やそれに関連したセキュリティを指すことが多いので、AI=人工知能が定着した、と考えて良いでしょう。

「知能」には物理量として計測可能な「能力(ある仕事をこなす力)」というニュアンスがあります。ここではデータ量やそれを駆動させるアルゴリズムが重要であることに加え、解決すべき問題がクリアに見えている(=正解は一つである)という前提が共有されていると思います。一方、日本語の「知性」には「品格」とか「品性」、あるいは「教養」のようなものが備わっているはずと感じている人も多いでしょう。世の中に正解など存在しないことを心得ている、とでもいいましょうか。知能が大脳に集中しているのと比較すると、知性は全身にくまなく分散していて、知能が単なるアクティブ(active)またはリアクティブ(re-active)なのに比べると知性はプロアクティブ(pro-active:先を見越した)な印象があります。

生成AIでがっつり儲けようとしている人や無節操に「AIを活用した〜が始まった」を連発するメディアからはあまり「知性」を感じないのはなぜか、はともかく、自然界に内在する未だ外部からは読み取れない、時に理解できない不可知な部分を含む自然現象や物質に対して、適切な環境制御という入力と価値の選択という出力に基づいて発現する知性を研究してきた4人のベテラン研究者(原正彦、中山知信、長谷川修司、桜田一洋)が「AI全盛時代における物質が持つ知性の育み方、あるいは実装」についてお気楽な雑談をやってみよう、というのが今回の「シュレディンガーの水曜日」です。奮ってご参加ください。(竹田)

開催概要

  • 日程:2023年11月8日(水曜)17:30から18:30まで(Zoomミーティング形式で実施します)
  • 今回は無料です。こちらからお申込みください
  • 主催:シュレディンガーの水曜日実行委員会(原正彦・中山知信・八十雅世・竹田茂)
  • 「シュレディンガーの水曜日」は本拠地をWirelessWireNewsからLocal Knowledgeに移行しました。WirelessWireNewsWeeklyと併せてLocal Knowledgeニューズレター もご購読いただければ幸いです。引き続きよろしくお願いします。
シュレディンガーの水曜日

原正彦(はら・まさひこ:メインコメンテータ、MC):ドイツ・アーヘン工科大学 シニア・フェロー
1980年東京工業大学・有機材料工学科卒業、83年修士修了、88年工学博士。81年から82年まで英国・マンチェスター大学・物理学科に留学。85年4月から理化学研究所の高分子化学研究室研究員。分子素子、エキゾチックナノ材料、局所時空間機能、創発機能、揺律機能などの研究チームを主管、さらに理研-HYU連携研究センター長(韓国ソウル)、連携研究部門長を歴任。2003年4月から東京工業大学教授。現在はアーヘン工科大学シニア・フェロー、東京工業大学特別研究員、熊本大学大学院先導機構客員教授、ロンドン芸術大学客員研究員を務める。

中山知信(なかやま・とものぶ:レギュラーコメンテータ):物質・材料研究機構(NIMS)国際・広報部門・部門長
1988年東京工業大学大学院・材料科学専攻修士修了(99年博士(理学)、東京大学)。91年、民間企業から理化学研究所に移籍し、ナノ物性研究に従事。2002年より、物質・材料研究機構(NIMS)。国際ナノアーキテクトニクス研究拠点(WPI-MANA)PI、同拠点副拠点長および事務部門長などを務め、2007年文部科学大臣表彰科学技術賞研究部門、2019年応用物理学会フェロー表彰などを受賞。筑波大学准教授、教授も併任し、2022年より同大学名誉連携教授。現在は、NIMS国際・広報部門長として研究の活性化に力を入れている。

長谷川 修司(はせがわ・しゅうじ):日本物理学会・会長、東京大学大学院理学系研究科物理学専攻教授
1960年生。東京大学大学院理学系研究科物理学専攻修士課程修了。理学博士。日立製作所基礎研究所研究員、東京大学大学院理学系研究科物理学専攻助手、同助教授、同准教授を経て、現在は東京大学大学院理学系研究科物理学専攻教授。専門は固体表面およびナノスケール構造の物性。2018年から2023年まで公益社団法人・物理オリンピック日本委員会理事長

桜田 一洋(さくらだ・かずひろ):慶應義塾大学・医学部 石井・石橋記念講座(拡張知能医学)教授
大阪大学大学院理学研究科修士課程修了(生理学専攻)。1988年協和発酵工業株式会社東京研究所に研究員として入所。2000年同研究所主任研究員。2004年日本シエーリング株式会社リサーチセンターセンター長。2007年バイエル薬品株式会社執行役員、神戸リサーチセンター長。2008年iZumi Bio, Inc.執行役員、最高科学担当責任者。同年株式会社ソニーコンピューターサイエンス研究所シニアリサーチャー。2016年 理化学研究所 医科学イノベーションハブ推進プログラム 副プログラムディレクターとなる。2021年より慶応大学医学部拡張知能医学講座教授として学生の指導にも携わり現在に至る。最新著書『亜種の起源 苦しみは波のように』(幻冬舎、2020)で、「心」をサイエンスで捉える生命論を展開する注目の研究者。

八十雅世(やそ・まさよ):情報技術開発株式会社・コーポレート本部経営企画室マネージャー
早稲田大学第一文学部美術史学専修卒、早稲田大学大学院経営管理研究科(Waseda Business School)にてMBA取得。技術調査部門や新規事業チーム、マーケティング・プロモーション企画職などを経て、現職。

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