2024/2/14(水曜)17:00~18:30
循環型社会を実現するプラスチック
- 環境配慮型ポリロタキサン含有高機能ビトリマー樹脂の開発と社会実装
Stronger, Stretchier, Self-healing Plastic
Posted by local knowledge on February 8th, 2024
東京大学大学院新領域創成科学研究科の伊藤耕三教授、安藤翔太特任助教らによる研究グループは、環境配慮型ポリロタキサン含有高機能ビトリマー樹脂の開発に成功しました。従来のビトリマー樹脂に比べて、伸長性が5倍、自己修復性が15倍、形状記憶性が2倍、ケミカルリサイクル性が10倍、それに加え海水生分解性が発現するなど、様々な性能が劇的に向上します。これは「ポリロタキサンのスライド運動による応力分散や結合交換反応を促進する効果によるもの」なのだそうですが、そもそも伊藤先生は内閣府主導のムーンショット型研究開発プロジェクトに採択された「非可食性バイオマスを原料とした海洋分解可能なマルチロック型バイオポリマーの研究開発」のPM(プロジェクト・マネージャ)です。
今回、強靭で資源循環可能なエポキシ系ビトリマー樹脂の開発に成功したことで、熱硬化性樹脂が抱える環境負荷の問題の解決に道が拓ける、もっと平たく言えば、循環型社会を実現できるプラスチックを作ったぜ、ってことですね。これで今回の研究プロジェクトが一気に加速したことは間違いありませんが、一方で、ムーンショット 型研究のPMには、実に様々な他団体との連携共同研究体制を活性化していくミッションがあります。今回の「シュレディンガーの水曜日」は、そのあたりのご苦労、そして「環境配慮型ポリロタキサン含有高機能ビトリマー樹脂」の詳細をお聞きしたいと思います。(竹田)
開催概要
イベント名称 | 循環型社会を実現するプラスチック - 環境配慮型ポリロタキサン含有高機能ビトリマー樹脂の開発 |
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開催日時 | 2024/2/14 (水) 17:00~18:30 ※お申込みいただいたみなさま全員に見逃し配信を行います。イベント終了後一両日中にはアーカイブ動画配信を開始し、約1週間のあいだご視聴いただけます。 |
話題提供者 | 伊藤耕三(いとう・こうぞう) 東京大学大学院新領域創成科学研究科・教授/公益社団法人高分子学会・会長 |
イベント形態 | 今回はZoomウェビナー(Webinar)を利用します。 ※お申込みいただいた方および「ローカルナレッジ」月額サブスクリプションメンバーの方には、参加URLを事前にメールにてお送りします。 |
参加料 | 1,500円(税込) ※月額サブスクリプションメンバーは不要 |
参加方法 | このウェビナー(Webinar)のみ申し込む、 または月額500円(税込)のサブスクリプション サブスクリプションに登録する ※サブスクリプションメンバーは月額500円のお支払いだけで、毎月3〜4回実施される「ローカルナレッジ」が開催する全ての有料セミナーに参加可能です |
購入期限 | チケットの購入期限は当日2月14日の16:00までとさせていただきます。 |
主催 | シュレディンガーの水曜日実行委員会(Schrödinger’s Wednesday Council)/ローカルナレッジ編集部 |
伊藤耕三(いとう・こうぞう)
東京大学大学院新領域創成科学研究科・教授/公益社団法人高分子学会・会長
1981年3月東京大学工学部物理工学科卒業、1986年3月東京大学大学院工学系研究科物理工学専門課程博士課程修了(工学博士)、1986年4月通商産業省工業技術院繊維高分子材料研究所研究員、1990年10月同主任研究官、1991年6月東京大学工学部物理工学科講師、1994年8月同助教授、1999年に、架橋点が自由に動く高分子材(スライドリング・マテリアル:SRM) を発明、 1999年4月東京大学大学院大学院新領域創成科学研究科助教授、2003年2月同教授、2005年5月アドバンスト・ソフトマテリアルズ株式会社を設立、取締役(兼務)、2014年(~2018年)ImPACT プログラム・マネージャー、2020年MOONSHOT プロジェクト・マネージャー研究活動
主たる研究活動
1)トポロジカルゲル
ゼリー状の物質であるゲルは、食品、医療品、工業製品等に幅広く利用されており、用いられる高分子の種類も多様である。しかし構造という視点から眺めてみると、物理ゲルと化学ゲルのわずか2種類しかない。最近我々は、そのどちらにも分類されず、架橋点が自由に動く新しい種類のゲル、すなわち「トポロジカルゲル」の合成に成功し、その力学物性および微視的構造を研究している。トポロジカルゲルでは、架橋点が滑車のように自由に動くため、ミクロな不均一構造・応力分布の不均一性が解消される結果、従来のゲルとは大きく異なる物性を示す。トポロジカルゲルの応用としては、透明かつ強靭という特性を生かして、ソフトコンタクトレンズ、人工関節などの生体材料への展開が期待されており、すでに実用化に向けての研究も進行中である。ゲルの材料としての最大の特徴は、構成成分がほとんど液体でありながら液体を保持しつつ弾性体として振舞う点であり、ソフトコンタクトレンズなどもその特徴を利用している。トポロジカルゲルは、可動な架橋点を導入することで高分子を最大限に効率よく利用することにより、従来のゲル材料では実現不可能であった高い液体分率と機械強度を両立させている。
2)分子被覆導線を用いた分子素子
近年、微細加工技術の驚異的な進展に伴い、半導体デバイスの高密度・高集積化が著しい。しかし、微細化がより進みナノメータースケールになると、加工限界、高価格化などの問題が生じ、根本的な発想の転換が求められている。このような問題を解決するためのアプローチの一つとして、従来の微細化(マクロからミクロへ)の方向とは逆に、原子・分子の組織化・集積化(ミクロからマクロへ)による機能素子(分子素子)を目指した研究が近年急速に盛んになっている。このような分子素子を構築する上で、基本的かつ重要な問題は、電子機能性分子間の信号伝達をいかに行うか、すなわちいかに配線するかという点である。最近我々は、導電性高分子を環状分子が包んだ分子被覆導線の作成に成功し、その電気特性を調べている。導電性高分子を被覆することで、高分子1本の性質を詳細に調べることが可能になった。また、環状分子の中に包接された導電性高分子は、形態が棒状に固定されるため、高い導電性が期待される。現在、この分子被覆導線を用いて、様々な分子素子を作成中である。分子被覆導線は、溶液中における混合という容易な手法で作成可能であり、理想的な1次元量子細線とみなすことができる。分子被覆導線の分子配線あるいは量子細線としての有効性が明らかになれば、分子素子の実現に向けて大きな弾みがつくことが期待される。
シュレディンガーの水曜日実行委員会
Schrödinger’s Wednesday Council
(写真左から)