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建築家、ゴリラ学を学ぶ ― 人類史の知見を活かした復興と再生を考える

Posted by local knowledge on April 8th, 2024

プリツカー賞を受賞されたばかりの山本理顕さんは、長年、建築家としてコミュニティのあり方を考え続けてこられました。

山本さんは、プライバシーとセキュリティ最優先の「1住宅=1家族」を唯一のモデルとし、専ら国の「経済」政策として推進されてきた戦後日本の「持ち家制度」には大きな問題がある、とおっしゃいます。世界の建築史も研究されてきた山本さんから見ると、「1住宅=1家族」や20世紀に発明された「住居専用地区」といったゾーニングの思想は、人間の本性に反し、少子高齢化のような社会の大きな変化にまったく対応できないものだと映ります。個人や家族の専有部分を「寝間」と「見世」とに小さく限定して共有部分を大きく確保した「地域社会圏」という新しい住宅建築モデルの提案は、自立した経済/文化/生活圏としての地域コミュニティの回復を企図されたものです。

今般の能登地震において山本さんは、現地で被災し復興に関わっている多くの方々とのお話を重ねるなかで、能登には歴史的にも非常にしっかりしたコミュニティが今も確かに存在していて、地域の自治意識もとても高いと実感されたそうです。さまざまな困難は立ちはだかっているものの、必ず復興はすると確信を持って、建築家として今後も関わっていきたいとおっしゃっています。

山本さんは、山極壽一さんのゴリラ社会に対する調査研究に以前から非常に関心を持っておられました。人類史を丹念に辿って見えてくる共感、小集団、遊び、移動といった人間の本来的なあり方と、これからの地域社会、或いは災害からの復興の方向性とを上手に結びつけていくことができれば、単なる復興よりもさらに射程の長い地域再生への道が拓けるのではないでしょうか。

開催概要

イベント名称建築家、ゴリラ学を学ぶ ― 人類史の知見を活かした復興と再生を考える
※本イベントは「Local Knowledge MeetUp Spring 2024 いま考える『地域主権』と『新しい復興』」のSession 2として開催いたします。
開催日時2024/4/26(金)14:00~15:00
※本イベントは見逃し配信を行いません。
話題提供者山本理顕さん(建築家)
山極壽一さん(総合地球環境学研究所所長、前京都大学総長)
イベント形態Zoom Webinarsを利用したオンライン開催です。
※お申込みいただいた方に参加用URLをメールにてお送りします。
参加料無料
参加方法参加登録はこちら
主催ローカルナレッジ編集委員会(スタイル株式会社本棚演算株式会社
協力一般社団法人・京都大学学術出版会
後援京都大学 東南アジア地域研究研究所
※プログラムの内容・時間などは予告なく変更となる可能性があります。ご了承ください。
山本理顕・山極壽一

©︎Tom Welsh for The Hyatt Foundation /Pritzker Architecture Prize.

山本理顕(やまもと りけん)写真左
2007-11年横浜国立大学大学院教授(建築都市スクール“Y-GSA”校長)、2018-2022年名古屋造形大学学長、2022年より東京藝術大学客員教授。主な作品にGAZEBO、埼玉県立大学、公立はこだて未来大学、横須賀美術館、The CIRCLE チューリッヒ国際空港、名古屋造形大学など。桃園、天津、北京、ソウルなどでも複合施設、公共建築、集合住宅などを手掛ける。主な著書に『地域社会圏主義』『権力の空間/空間の権力』『脱住宅』『都市美』など。2001年第57回日本芸術院賞、2024年度プリツカー賞受賞。

山極壽一(やまぎわ じゅいち)写真右
総合地球環境学研究所所長、前京都大学総長、京都大学名誉教授。京都大学大学院理学研究科博士課程修了。専門は人類学、霊長類学。主著に『共感革命――社交する人類の進化と未来』(河出新書、2023年)など。