集合写真は星座として輝く
Group Photos shine like Constellations
Photo : 冬の天の川とふたご座流星群 / mazuya_tm / Adobe Stoc
Posted by local knowledge on December 30th, 2025
「ただいま(たった今)事務所に戻りました!」と上司に元気よく報告した時点ですでにそれは厳密には「今」ではなく(数秒の)過去になっている、というように、私たちは「今」を正確に把握することなく、次から次へと過去を生産しています。ただし、その「今」という瞬間をカメラに定着させることはできます、というかそれ以外に「今」を把握する手段を私たちは持ち合わせていない、ということかもしれません。もっともその瞬間を捉えたはずの写真を眺めている私たち自体がどんどん過去に押し流されてしまうわけですから、やはり「写真」という記憶装置が果たす役割は大きいなあ、と改めて思うわけです。
で、この「今」の記憶・記録装置としてのカメラが最高の威力を発揮するのが「集合写真」なのではないか、ということを正月の間、ぼんやりと考えていました。それも卒業写真のような“正規化”されたものではなく、たまたま偶然その場に居合わせた何人かに対してカメラマンが「撮影しますよー」と声をかけて撮れたものに良い写真が多いような気がします。逆説的ですが、集合写真が面白いのは、比較対象が同じ一枚に収まっているので個人のポートレートよりも一人一人の個性が際立つ、という点にあります。表情もカラダの向きもバラバラで、笑顔を向けてくれる人もいれば「なんで写真なんか撮るのだ」と不機嫌になってそっぽを向いている人もいる、みたいなのがいいですね。こうして私たちは作り物ではなく、そして二度と再現されることがないであろう「瞬間」を手に入れることができます。
さらに加えて言えば、冬の夜空は星の観察にはうってつけの季節なのですが、その冬の夜空を見上げていて気がついたのは、集合写真というのは一つ(一人)でも欠けると全く別のものになってしまう、という意味で星座(constellation)そのものだな、ということですね。例えば理工学系で有名な集合写真として、コペンハーゲンに留学中の仁科芳雄(1890 – 1951、理化学研究所第4代所長)が写っている集合写真がありますが、そもそもこの場に仁科がいなければ私たちはこの集合写真を見ることすらなかったはずですし(前列中央にいる David M. Dennisonの表情のやる気のなさがなんとも印象的です)写真全体の雰囲気も大きく変わっていたはずです。
そして正規化されていない集合写真の最大の魅力はその「開放感」にあります。個々の被写体が自分の心情をそのまま曝け出している魅力とでも言いましょうか。そして素直に自分自身の感情を常日頃開放しているのは人に限らない、実は「自然(風景)」こそが24時間365日で自分自身の心情を「開放」しているとみなすこともできます。
2025年12月に開催されたTOKYO ART BOOK FAIR(大盛況でした)で、写真家津田直さんの新作作品集『LO』がお披露目されました。そこでは、かつてチベット系の王国だったネパールの奥地ムスタンで昨年撮影された風景の数々が、上部両端の角をなくした平べったい半円形(つまりキューポラのかたち)に整えられ、幻想的なリソグラフ印刷で刷られています。1月9日の22時から実施する「写真集の夜」第9回は、刊行されたばかりの『LO』を中心に作品ひとつひとつを取り上げながら、津田さんのここまでの歩みやこれからについて、写真評論家・飯沢耕太郎さんとお二人で語り合っていただきます。スケールの大きな開放感を味わっていただける夜になると思います。
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https://www.localknowledge.jp/2025/12/2157/
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