自分の土地に眠る精霊を掘り起こせ
Awaken the Genius Loci slumbering within Your land
Photo : Deep forest of Yakushima / Tonic Ray Sonic / Adobe Stock
Posted by local knowledge on January 29th, 2026
昨年5月に『森林循環経済』というメディアを創刊しました(ぜひ 無料メルマガ登録をお願いします!)。メディアを作る時は当該分野の専門書やビジネス書を大量に読み込むのですが、調べれば調べるほど、日本の森林・森林産業は(特に明治維新以降)とんでもないことになっていて「これは俺が生きてるうちにどうにかなる問題ではなさそう」と考え、編集内容をバイオマス化学(biomass chemistry)中心にしていけばなんとかなるかも、という方針でスタートしました。ただ、たくさんの本を読み込む中で、非常に印象に残ったのが、日本を代表する森林ジャーナリスト田中淳夫氏による『森と日本人の1500年』(平凡社新書、2014)の最終章における「結局、“美しい森”を育て、愛することができるかどうかではないか」という問題提起でした。『森林循環経済』のキャッチコピー(タグライン)が「森と木を愛する人のために。」となっているのはこれが理由です。様々な(森林関連の)行政を含めた利害関係者の論理が噛み合わず破綻している時、最後に説得力があるのは“情緒”だと思うわけです。
そして森林関係を色々調べていくと、どうやら日本には独特の「山岳信仰」があるらしい、ということに気づき、そこを深掘りしていくと、仏教が伝来するはるか以前の縄文時代から(いわゆる)土着の民間信仰なるものがあったことがわかってきました(私は自分を「宮本常一派」と自認していたのですが、やっぱり柳田國男はすごいですね)。民間信仰の中心に据えられていたのが山岳信仰という言い方もできるかも知れません。何しろヒトが生きていく上で必要な食料はその大半が森林からフィードされますし、コメ(米)もその源流はヤマにあるわけですし、森林の中を流れてくる川のそばこそがヒトの生活拠点になるわけですから、ここにある種の霊性(spirituality)を感じるのはごく自然の成り行きと考えられます。今年は「ヤマ・コメ・クマ」の三題噺をウマに乗りながら観察するトシなのかもしれません。
森林を中心とした民間信仰や霊性には根強い地域性(土地に固有の特徴)があります。で、来週2月8日の「写真集の夜」にご登場いただく写真家の館野二朗さんは、若い頃からバックパッカーとしてあちこちの自然に対峙し、自然そのものの美しさから受けるインスピレーションを写真に収めてきた方です。そして2016年に初めて奄美大島を訪れ、最初はその美しい風景に魅了されていただけだったのが、何度も訪れるうちに、その亜熱帯地域独特の森林や海、そしてそこを拠点として生活している人たち自体の魅力に気がつくようになり、奄美独特の精霊(Genius Loci)を実感することになります。それがやがて「AWAI(間)」というテーマへとつながり、今回『AWAI 奄美2016-2025』 を発刊する運びとなった、というわけです。
飯沢耕太郎さんもエッセイを寄せその制作に深く関わられたということもあり、昨年末に写真集食堂「めぐたま」でゲラ刷りを拝見したんですが、奄美と無縁な私もちょっと感動しましたね。日本の魅力的な様々な地域が土着の霊性を軸にして活性化していく時の副読本的写真集になること間違いないです。大半の政党が「消費税ディスカウントキャンペーン」を連呼する、全く矜持が感じられない選挙演説の中に日本の将来はありません。むしろ『AWAI 奄美2016-2025』を手に取って、改めて自分が住む土地に潜んでいるはずの精霊を掘り起こす作業に着手した方が「豊かな未来」がやってくるような気がします。というわけで、今回の写真集の夜は「めぐたま」に館野二朗さんをお招きしてライブ中継します。いつもの「写真集の夜」よりも少しコストがかかっているので今回は有料(1,800円)ですが、ぜひご参加いただければ幸いです。
お申し込みはこちらから。
https://www.localknowledge.jp/2026/01/2178/
ニュースレターのバックナンバーはこちらからご覧いただけます。
最新のコラムはニュースレターでお送りしています。お申し込みは下記から
ニューズレター登録はこちら

