アンソロ・ビジョン:人類学/人文学の視点

Anthro Vision

Anthro Vision(アンソロ・ビジョン)という言葉自体はジリアン・テット(Gillian Tett)がAnthropology(人類学)を基にして作った造語ですが、もともとAnthroposはギリシャ語で「human(人間,人間の)」を意味する言葉で、「philosophical anthropology」という語として(哲学的)人間学という意味でも利用されていました。アンソロ・ビジョン自体は「人類学的視点からの観察が、ビジネスに大きな利益をもたらす」と主張しているに過ぎませんし、目新しいわけでもありません。ビッグデータ解析が全く役に立たないことはトリシア・ワン(Tricia Wang)の2016年のTEDでの講演「The human insights missing from big data」で詳らかにされていますし、生成AI(Generative AI)は新しい価値を創造するわけではない、とOpen AIのCEO自身が明言しています。このような状況で再び注目されているのがエスノグラフィー(Ethnography)、またはスーパーエスノグラフィー(Super Ethnography)と呼ばれる人類学的調査方法です。アンソロ・ビジョンはこの動きを後押ししてくれる、使いやすいキャッチフレーズだ、と言えるでしょう。

下條尚志・清水展

現代史を動かすのは、「国家」から逃れた人びとだ――下條尚志さんの『国家の「余白」』、清水展さんの『草の根グローバリゼーション』を題材に、お二人と編集者によるトークイベントを開催

「Anthro-vision」(人類学的思考)という言葉があります。フィナンシャル・タイムス米国版の編集長だったG・テットの造語で、彼女は、この「Anthro-vision」こそ、現代社会の危機を救う思考方法だと言います。...