2023/10/6(金)17:00~
現代史を動かすのは、「国家」から逃れた人びとだ――下條尚志さんの『国家の「余白」』、清水展さんの『草の根グローバリゼーション』を題材に、お二人と編集者によるトークイベントを開催
Posted by local knowledge on September 30th, 2023
「Anthro-vision」(人類学的思考)という言葉があります。フィナンシャル・タイムス米国版の編集長だったG・テットの造語で、彼女は、この「Anthro-vision」こそ、現代社会の危機を救う思考方法だと言います。
日本にも、まさに社会を変革する力を持つ人類学研究を打ち立てた人びとがいます。その一人、下條尚志さんは、人が住み村もある都市からも遠くない、それなのに何故か国家が統治できない、そんな不思議な空間が世界最大の稲作地帯にあることを見いだしました。これまで誰も気づかなかった歴史の原動力を発見したその著書『国家の「余白」』は、国際学術賞も含む5つの賞を受賞しました。そしてその師匠である清水展さんは、過剰に理論化した現代人類学を批判して、地域に強く関わる「応答の人類学」を提唱し、20世紀最大の火山災害に見舞われたアエタ族など、フィリピンの先住民社会と40年にわたって伴走し、その『草の根グローバリゼーション』の実践は、人類学者として初めて日本学士院賞を受賞する最高の学術評価に輝きました。
グローバリゼーションにともなう人口と情報の流動の中では、「国家の余白」は大都市の中にさえ生じ得ます。そこに生きる人びとが、国家や首都を飛び越した「草の根のグローバル化」として繋がり行動すれば、紛争と環境破壊に病むこの世界を変える力になる。ちょうど日本中世の社会変動の駆動力となった「悪党」のように、国家を逃れた人びとの実践は、金融資本主義と国家主義に支配された現代を乗り越える力を持つかもしれません。その時、「国家」はどんな役割を果たすのか、「個人」にはどのような責任が生じるのか。国家/個人という二分法的な思考そのものは問題にはならないのか。国家と個人の間に揺れる世界を再構築する人類学的な思考について、縦横に議論します。
開催概要
- 開催日時:2023年10月6日(金)17時〜
- Zoomを利用したオンラインイベントです。申し込みいただいた方にURLをお送りします。
- 参加費は無料です。
- お申し込み:こちらのイベントは終了しました。
- 出演:下條尚志、清水展、鈴木哲也(京都大学学術出版会)