家族と性からアジアの<歴史>と未来を見る

【ウェブ読書会】 家族と性からアジアの<歴史>と未来を見る
―『中国ジェンダー史研究入門』『東アジアは「儒教社会」か?』『東アジアの家族とセクシュアリティ』を読む―

Posted by local knowledge on February 20th, 2024

先日亡くなられた男女雇用機会均等法の母と呼ばれた赤松良子さんは,「近代的な高層ビルの中に,まだ家父長制が居座っている」と憤慨されたと言います。確かにジェンダー平等や家族の在り方をめぐって,社会は大きく変わってきました。性的少数者への理解も徐々に進んでいます。しかし,赤松さんが憤慨されたように,特に事が政策や制度面に及ぶときには強いバックラッシュが働きます。そしてそうしたバックラッシュに常に貼り付いてきたのが,「伝統」という言葉であり,その「伝統」とされているものが「儒教」です。しかし「男中心」の構造や倫理観・価値観の説明論理を「東アジアに共通する儒教的伝統」とすること自体,本当のことなのでしょうか。

言うまでもなく「儒教」は中国に始まりますが,それが社会全般に普及するのは,実は明代(14~17世紀)になってからです。同じ頃,朝鮮/韓国,日本,琉球,ベトナムといった中国の周辺にある社会が「近世」を形作る中で,それぞれの社会の政治経済文化的文脈に応じて,様々なかたちの「儒教化」が起きました。たとえば日本では,もともとの儒教では強く重視されなかった「忠」が強調される「武士道儒教」が支配層に普及する一方,庶民レベルでは「家業」の継続という文脈の中で独特のジェンダー構造が定着しました

近代になると,そうした儒教を巡る構築/脱構築はさらに複雑になり。韓国のようにジェンダー平等が制度として認められる例がある一方,中国のように,西洋中心主義への対抗すなわち個人主義(自由主義)に対する「家族主義」として,「儒教」が再評価されている現実もあります。

今回のウェブ読書会では,古代以来の東アジアの家族の在り方と儒教に焦点を当てながら,家族の性の歴史を振り返ることで,「家族」,ジェンダー秩序の未来を考えます。

紹介する書籍・関連書籍

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3,300円(amazon.co.jp 2024年2月15日時点)

東アジアの家族とセクシュアリティ

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出版社:京都大学学術出版会

発売日:2022/2/24

4,950円(amazon.co.jp 2024年2月15日時点)

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21世紀家族へ:家族の戦後体制の見かた・超えかた

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発売日:2019/10/24

2,090円(amazon.co.jp 2024年2月15日時点)

開催概要

イベント名称【ウェブ読書会】 家族と性からアジアの<歴史>と未来を見る
―『中国ジェンダー史研究入門』『東アジアは「儒教社会」か?』『東アジアの家族とセクシュアリティ』を読む―
開催日時2024/2/23(金)17:00~18:30
※お申込みいただいたみなさま全員に見逃し配信を行います。イベント終了後一両日中にはアーカイブ動画配信を開始し、約1週間のあいだご視聴いただけます。
話題提供者小浜正子・日本大学文理学部教授(中国近現代史・中国ジェンダー史)
桃木志朗・大阪大学名誉教授(ベトナム史・東南アジア地域研究)
郭立夫・東京大学総合文化研究科(フェミニズム・クィア理論)
MC鈴木哲也(すずきてつや)
京都大学学術出版会
イベント形態Zoomミーティングを利用したオンラインイベントです。
※お申込みいただいた方および「ローカルナレッジ」月額サブスクリプションメンバーの方には、参加URLを事前にメールにてお送りします。
参加料400円(税込)
※月額サブスクリプションメンバーは不要
参加方法このウェビナー(Webinar)のみ申し込む
または月額500円(税込)のサブスクリプション サブスクリプションに登録する
※サブスクリプションメンバーは月額500円のお支払いだけで、毎月3〜4回実施される「ローカルナレッジ」が開催する全ての有料セミナーに参加可能です。
購入期限チケットの購入期限は当日2月23日の16:00までとさせていただきます。
主催京都大学学術出版会
※プログラムの内容・時間などは予告なく変更となる可能性があります。ご了承ください。
小浜正子(こはま まさこ)
小浜正子(こはま まさこ)

日本大学文理学部教授。(公財)東洋文庫研究員。お茶の水女子大学人間文化研究科博程単位取得退学、博士(人文科学)。専門は中国近現代史、中国ジェンダー史。主な著書に、『一人っ子政策と中国社会』(京都大学学術出版会、2020年)、『東アジアの家族とセクシュアリティ』(共編著、京都大学学術出版会、2022年)、『中国ジェンダー史研究入門』(共編著、京都大学学術出版会、2018年)など。

桃木 至朗(ももき しろう)
桃木 至朗(ももき しろう)

日越大学(ベトナム)教員、大阪大学名誉教授。京都大学文学研究科博士課程中退、博士(文学)。専門はベトナム史。主な著書に、『中世大越国家の成立と変容』(大阪大学出版会、2011年)、『市民のための世界史』(共編著、大阪大学出版会、2014年)、『市民のための歴史学』(大阪大学出版会、2022年)など。

郭 立夫(Guo Lifu かく りつふ)
郭 立夫(Guo Lifu かく りつふ)

東京大学総合文化研究科博士課程。専門はフェミニズム・クィア理論、地域研究(中国・アフリカ)、社会学。主な著作に、「終わるエイズ、健康な中国:China AIDS Walkを事例に中国におけるゲイ・エイズ運動を再考する」(『女性学』28、2021年)、「重新想像跨國酷兒運動:2017 北京愛酷電影週中非酷兒電影論壇的事例」(『台湾文化研究季刊』167、2019年)など。