写真集の夜
Shashinshu-no-Yoru
オンライン・フォトブック・ギャラリー開設に向けて
日本は世界に冠たる「写真集の国」です。1960年代以来、多くの写真家たちが、グラフィックデザイナーや編集者とともに、素晴らしい写真集を刊行してきました。展覧会のカタログのようなそっけない体裁が多い欧米の写真集と比較すると、日本の写真集は隅々にまで気が配られ、写真を通して何を伝えるのかというメッセージがくっきりと浮かび上がるように構成されています。その流れはいまも続いていて、日本の写真集のクオリティの高さ、刊行点数は世界的にも突出しているといえるでしょう。
2014年、東京・恵比寿に、おいしい食事とともに写真集6,000冊以上を自由に閲覧できる「写真集食堂めぐたま」が開業しました。私は、以後11年にわたってその運営にかかわり、写真集の魅力、可能性を伝える活動をしてきましたが、まだまだ不十分だと思っています。そんな時に、地域と本をつなげる「ローカルナレッジ」や多くのウェブサイトを運営するスタイル株式会社の竹田茂さんたちが立ち上げようとしているオンライン・フォトブック・ギャラリーの企画を知り、その趣旨に賛同して、参加させていただくことになりました。
オンライン・フォトブック・ギャラリーは、ネット配信によってさまざまな写真集を紹介していくプログラムです。私と写真集の作者、ときには出版社やデザイナーの方たちなどとのトークを、ひと月に一度くらいのペースで配信していきます。取り上げる写真集は、話題を集めている新作が中心になりますが、ときにはやや前に刊行されたものにもスポットを当てていきたいと思っています。写真集という媒体を通じて、日本の写真文化をより広がりのある、開かれたものにしていくという本企画の趣旨をご理解いただき、ぜひご支援、ご協力をお願いします。
飯沢耕太郎(写真評論家)