村上塾「音楽、地の塩となりて」第二回

邦楽は日本文化を知るための極めて効果的なアプローチ/ミュージックスとの付き合い方
(村上塾「音楽、地の塩となりて」第二回)

Posted by local knowledge on December 21st, 2023

ビートルズの新しい『The Beatles 1962-1966』(赤盤)と『The Beatles 1967-1970』(青盤)が「Now And Then」以上に話題になっているようです。元々モノラルミックスだった音源を一旦AIで楽器別に分離してあたらめて再配置した上でリミックスすることで、今まで聞こえなかった演奏がクリアに聞こえるようになったことがその理由のようです。AIに作曲させるというような邪道(そんな音楽を聴きたい人はいません)ではなく、調味料としてAIを使う、という実に正しい活用方法、とは言えるでしょう。

しかし結局のところ、AIが調味料に過ぎないとすれば、元々の楽曲(素材)が優れている、という前提があってこそのAIなわけですから「AIを利用することそれ自体が目的化するとロクなことにならない」という言い方もできるかもしれません。つまるところ音楽で重要なのは「演奏者の息遣い」が感じられるかどうかでしょう。猫も杓子もフェアライト(Fairlight CMI )やシンクラビア(Synclavier)を使うようになった80年代から、音楽は恐ろしくつまらないものになった、と感じていますが、そもそも(クラシックも含め)洋楽一辺倒という自分自身の趣味に何か大きな問題がありそうな気もします。そんなタイミングで今回ご登場いただく徳丸吉彦先生(お茶の水女子大学・名誉教授)にお会いすることができたのはとても幸運でした。

徳丸先生は著書『ミュージックスとの付き合い方』(左右社、2016)の中でこうおっしゃっています。

「およそ音楽と呼ばれるもので、民族的・文化的拘束から全く自由なものはあり得ない。すべての音楽は、ある文化の脈絡と根本的にかかわっている。その意味では、生活の行事に伴う音楽や宗教行為とともにある音楽をはじめとして、民俗芸能に伴う音楽、諸国の民謡、さらに「ポピュラー」と「クラシック」の別なく芸術表象の現象としての音楽も、すべて「民族音楽」の中に含めるのが当然であろう」加えて「邦楽は、日本文化を知るための極めて効果的なアプローチなのに、それを聴く人が減ってることは大いに問題」とも指摘されています。

では私たちは今後、この「ミュージックス(複数形であることが重要です)」と今後どう付き合っていくべきか。村上塾「音楽、地の塩となりて」の第二回として徳丸先生のお話しをじっくりお聞きするサロンを開催します。

開催概要

  • 村上塾「音楽、地の塩となりて」第二回
  • 開催日時:2023/12/22(金曜)19:00~20:30
  • 出演:
    徳丸吉彦(とくまる・よしひこ)聖徳大学客員教授/お茶の水女子大学名誉教授
    村上陽一郎(むらかみ・よういちろう)東京大学/国際基督教大学・名誉教授
  • Zoomウェビナー(Webinar)を利用したオンラインイベントです。お申込みいただいた方にURLをお送りします。
  • お申込みいただいた方は見逃し配信も可能です。終了後一両日中にはアーカイブ動画配信を開始し、約1週間のあいだご視聴いただけます。
  • 参加料:1500円(税込) このウェビナー(Webinar)のみ申し込む、または月額500円(税込)のサブスクリプション サブスクリプションに登録する(「ローカルナレッジ」が開催する全ての有料セミナーに月額500円でご参加いただけるお買い得なメニューです(1回のイベント毎に500円ではなく、月1回500円のお支払いで、全てのイベントに参加できます)
  • お申込みいただいた方および「ローカルナレッジ」月額サブスクリプションメンバーの方には、参加URLを事前にメールにてお送りします。
  • チケットの購入期限は当日12月22日の16:00までとさせていただきます。
  • 主催:ローカルナレッジ編集部(スタイル株式会社)
  • プログラムの内容・時間などは予告なく変更となる可能性があります。ご了承ください。
徳丸吉彦

徳丸吉彦(とくまる・よしひこ)聖徳大学客員教授/お茶の水女子大学名誉教授
東京生まれ。戦災で家も楽器も失われたため、音楽を始めるのが遅れた。それでも、東京大学・同大学院で美学・音楽学を学び、ラヴァ―ル大学より博士号を受けた。音楽学の中では、音楽記号学・民族音楽学を中心にし、ベトナムの旧・宮廷音楽の再活性化、同国の少数民族の音楽の記録化、日本の箏のための絹弦の開発も行った。お茶の水女子大学名誉教授・聖徳大学名誉教授客員教授。『ミュージックスとの付き合い方:民族音楽学の拡がり』」(左右社、2016,民族藝術学会木村重信賞)『ものがたり日本音楽史』(岩波書店、2019、毎日出版文化賞特別賞)、また『ビジュアル日本の音楽の歴史』全3巻(ゆまに書房、2023)を監修。

村上陽一郎(むらかみ・よういちろう)東京大学/国際基督教大学・名誉教授
1936年東京生まれ。科学史家、科学哲学者。東京大学教養学部卒業、同大学大学院人文科学研究科博士課程修了。東京大学教養学部教授、同先端科学技術研究センター長、国際基督教大学教養学部教授、東洋英和女学院大学学長などを歴任。東京大学名誉教授、国際基督教大学名誉教授。『ペスト大流行』『コロナ後の世界を生きる』(ともに岩波新書)、『科学の現代を問う』(講談社現代新書)、『あらためて教養とは』(新潮文庫)、『人間にとって科学とは何か』(新潮選書)、『死ねない時代の哲学』(文春新書)など著書多数。