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個人をボーダーレス(borderless)にする

Photo : 冬の白川郷 世界遺産 / lastpresent / stock.adobe.com

Posted by local knowledge on January 19th, 2024

第一次産業(農林水産業)と第二次産業(製造業、建設など)の就労者数の合計と、第三次産業(小売、医療、金融、情報通信、飲食などの各種サービス産業)の就労者数は1970年代まではまだ拮抗していたのですが、その後はこの図にあるように「就労者の大半はサービス業」という状態になりました。乱暴な区分ですが、前者を「作る人」だとすると後者は「売る人・考えるだけの人」とみなすことができます。つまり今日の日本は「作る人」がどんどん消滅し「売る人」しかいない、という状態になっていると考えられます。これに就労者の高齢化、および(就労者数の)絶対数の減少という傾向が加わってきます。この間GDP成長率がほぼゼロ、という状況が続いていますから、日本はもはや成長を目指す国ではなく、成熟した社会を目指さざるを得ないことがわかります。

産業別グラフ

総務省統計局 「労働力調査」より引用

長期的戦略を別にすれば、今求められているのは「リスキリング(Reskilling)してDX時代に対応できるスキルを身につけよう」などという政府の愚策に背を向け、まずは副業として「ものづくり」に参入することでしょう。普段はデスクワーク主体のサラリーマンだが、週末には野菜を作っている、みたいなものでもいいと思います。まずは「隗より始めよ」ということで、自分自身の仕事をボーダーレス(borderless)にしていく、ということですね。昨年の大晦日に放映されたNHK紅白歌合戦のテーマが「ボーダーレス」だったようですが(おそらく国境を超える、という意味で利用したのだと思いますが)内容はともかく、テーマ自体は来るべき時勢を先取りした良いものだったように思います。

その意味で、昨日実施されたイベントにご出演いただいた海士町中央図書館館長・磯谷奈緒子さんのお話しは非常に興味深いものでした。中央図書館を拠点に学校・公民館・各機関と協働して島のあちこちに図書スポット(これを“分校”をいうようです)を設置し、そのスポットで働く人がついでに図書館業務の一端を担っているようなのですね。本をネタに人のつながりを加速させることが目的になっていて、本はボーダー(境界)を破壊するための単なる道具にすぎない、とおっしゃっているように感じました。そして「本を扱う」ということであれば(一種の副業として)例えば学校に勤務する方もちょっとしたお手伝いならできる、ということのようです。個人的には、50人しかいない小学生も本の配達・返却のための人財として活用してもいいのではないかと思いましたが、それはさすがに色々問題がありそうですね。

ともあれ、人口の少ない街や島では結果的に仕事もボーダーレスにならざるを得ないわけで、これは大げさに言えば近い将来の日本の縮図がすでに海士町では展開されている、とみることもできるでしょう。逆に人口が少ないからこそ濃密なコミュニケーションが取れる、ということもありそうです(ダンパー数:Dunbar’s numberの論理ですね)。具体的にどのような活動を行なっているのかは来週のローカルナレッジ/本の場で明らかになると思います。簡単な「ふりかえり」からスタートしますから、今週参加できなかった方でも十分楽しいと思いますよ。お申し込みはこちらから。

ローカルナレッジ 発行人:竹田茂

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